産婦人科

後期研修プログラム

理念・特徴

理念

産婦人科医師としての専門性を取得することが、後期臨床研修プログラムの第一目標となる。周産期・生殖・腫瘍・女性医学の4本柱全てを確実に理解し、患者さんに質の高い医療を提供できる産婦人科医を目指すだけでなく、仁術としての医療も提供できる産婦人科医師を目指すことが本プログラムの理念である。

特徴

神奈川県内でも人口の多い川崎市に位置しているため、生殖医療、周産期医療、婦人科医療のどの範囲においても症例数が多いのが特徴である。さらに、周産期救急領域では川崎市唯一の総合周産期母子医療センターを有しているため、正常分娩だけでなく重症疾患も豊富に経験できる。また、各領域のカンファレンスにおいて、後期臨床研修医に対するフィードバックを行うことにより知識や技術の確認を行い、産婦人科領域における講座内での基本的な知識の共有とともに、最先端医療の習得も目標としている。
(1) 生殖医療
生殖医療センターでは、多数の人工授精および高度生殖補助医療を行っている。当施設は症例数
も多く、体外受精の件数では全国の大学でも最も多い施設の一つとなっている。また、体外受精を
含む一般的な不妊治療の他に、早発卵巣不全の専門外来や、がん・生殖医療外来などの特殊外来を
設けているのが特徴的である。早発卵巣不全外来では、当院独自の排卵誘発法の開発のほか、卵巣
組織の体外培養および自家移植による休眠卵子活性化などの先進的な医療も行っており、米国科学
アカデミー紀要(PNAS 2013 :110(43); 17474-17479. )への報告によって、世界的な注目を集め
ている。がん・生殖医療では、妊孕性温存を希望されている若年がん患者に対して、治療開始前に
配偶子、胚そして卵巣組織を凍結保存し、寛解後ARTによって妊娠成立を目指す医療を行っている。
がん患者さんに対する卵巣組織凍結は、本邦では現在30施設のみで行われている極めて先進的な
医療であるが、当施設は本邦において最多の症例数を扱っている。
本領域における研修では、生殖医療専門医の取得に向けた一般的な不妊治療の知識及び技術の習得はもちろんのこと、先進的な医療を行うための基礎研究の知識を習得し、定期的に行われる基礎研究者とのカンファレンスを通して、基礎研究の成果を難治性不妊症の治療へ応用するための実践的なトレーニングを行う。また、腹腔鏡手術や子宮鏡手術など、産婦人科医師としても必要な手術手技の習得も同時に行うことができる。
(2) 周産期医療
平成22年3月に総合周産期母子医療センターが開設され、川崎市を中心とした神奈川県の周産期医療の基幹病院として機能している。センターはMFICU 6床、産科病床42床、NICU 12床、GCU 24床を有し、内科及び外科的合併症を有する、あるいは出生前診断にて周産期に母児の管理を必要とするハイリスク妊婦やハイリスク新生児を救命すべく日々努力している。なお、平成27年度の分娩数は、経腟分娩394件、帝王切開分娩337件で、出生体重1,000g以下の分娩数は32件、1500g以下は56件、母体搬送受け入れ件数は119件、産後大量出血などで動脈塞栓術を施行した症例は4件だった。毎朝の産婦人科全体カンファレンスのほか、新生児科と小児外科との密接な連携を行い、定期的に院内周産期カンファレンス、川崎地区および横浜地区近隣病院と病診連携の勉強会を行っている。なお、特定妊婦、社会的に支援を要する妊婦の支援に関する臨床研究や、カニクイザルを用いた周産期大量出血に対する動脈塞栓術の有用性に関する基礎的研究も行っている。
(3) 婦人科医療
当院は婦人科腫瘍専門医修練施設として、年間約130例の浸潤がん症例を扱っている神奈川県内有数の婦人科腫瘍専門施設である。悪性腫瘍を中心とした婦人科全般に関する手術とともに化学療法や放射線療法も併せた集学的治療も行っている。毎朝手術症例と化学療法に関する産婦人科全体カンファレンスを行っている。さらに、放射線治療や画像診断に関する放射線科とのカンファレンスや細胞診・組織診断に関する婦人科病理カンファレンスを婦人科、放射線科、病理診断部の3部署の合同で定期的に行っている。緩和医療においては、院内の緩和ケアチームと連動して、早期からの切れ目のない緩和医療の提供を行い、緩和ケア医療部会のカンファレンスにも積極的に参加している。子宮鏡や腹腔鏡による良性疾患(子宮筋腫に対する腹腔鏡下子宮全摘術や子宮筋腫核出術)の手術症例数も豊富にあり、早期子宮体がんに対する腹腔鏡手術やマイクロ波子宮内膜アブレーションも行っている。さらに、先進医療である子宮腺筋症核出術も取り入れている。
(4) 女性医学
産婦人科4本目の柱となる女性医学(更年期医学を含む)分野では、アゼリア外来が開設されており、更年期障害や早発卵巣不全患者に対するホルモン補充療法(HRT)や漢方薬、サプリメント、プラセンタを用いた治療を行っている。閉経後女性の健康管理、促進のため生活習慣病予防、特に冠動脈疾患、骨粗鬆症の予防に積極的にも取り組んでいるほか、高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病、うつ病に対してもアゼリア外来で精査加療を行っている。早発卵巣不全患者に対するホルモン療法の脂質代謝、骨量への影響についての臨床研究を進めている。

研修病院

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院、川崎市立多摩病院、けいゆう病院、京浜総合病院、横浜総合病院、総合高津中央病院、町立八丈病院、IVFなんばクリニック、IVF大阪クリニック、JA北海道厚生連旭川厚生病院、稲城市立病院、総合磐城共立病院、済生会横浜東部病院、平塚市民病院、大和愛育病院、伊東市民病院、高知医療センター

プログラム責任者・指導医

統括責任者: 鈴木 直
指導医:   五十嵐 豪

ローテーションプログラム例

【大学院生】
(1) 大学院1−2年目の24ヶ月のうち、最低12ヶ月は大学病院あるいは関連病院で研修とする。
(2) 大学院生は、4年間に最低12か月〜の研究専念期間を持つことができる。研究専念期間を国内・国外留学に充てることもできる。
(3) 大学院生は、大学院修了後少なくとも1年間を、大学病院にて専門領域および一般臨床研修に従事する。
(4) 大学院4年目までに学位を取得する。
【非大学院生】
(1) 後期研修1~3年の36ヶ月中、およそ12~18ヶ月を分院または関連研修病院勤務とする。
(2) 研修4~5年目は、一般臨床研修とともに専門領域の研修を行う。

到達目標

産科病棟、婦人科病棟において受け持ち医として独立して診療できる。また、産婦人科一般外来診療を独立して行うことができる。

一般目標

産婦人科全般の広い臨床能力を持つ産婦人科専門医になることを目指す。日本産婦人科学会の認定する「産婦人科専門医」を取得できる経験と能力を培う。

行動目標

【産科病棟】
(1) 指導医の指導下で、主治医として異常妊娠(妊娠高血圧症候群、合併症妊娠、前置胎盤、常位胎盤早期剥離など)を適切に管理できる。
(2) 指導医の指導下に産科出血、DICの管理を行うことができる。
(3) 産科超音波による正常妊娠のスクリーニングを適切に行うことができる。
(4) 主治医として切迫流・早産の管理治療ができる。
(5) 異常分娩(骨盤位、吸引分娩、多胎分娩など)を取り扱うことができる(目標症例数20症例)。
(6) 以下の項目について、研修医を指導することができる。
①正常分娩の取り扱い
②前置胎盤、常位胎盤早期剥離、HELLP症候群などの診断
③産科超音波、CTG所見
【婦人科病棟】
(1) 指導医の指導下で主治医として婦人科良性腫瘍の手術適応を決定し、合併症のない症例に関しては術者として手術を施行、術後管理を行うことができる。
(2) 目標手術症例数(術者として):腹式単純子宮全摘術30例、付属器切除術20例など。
(3) 婦人科手術の助手としての糸結び等の基本手技および局所解剖等の基本的知識、術前・術後管理について研修医を指導することができる。
(4) 婦人科悪性腫瘍の手術の第1〜2助手ができる。
(5) 婦人科悪性腫瘍患者の手術適応、術前・術後処置、化学療法、放射線療法の適応、施行法を研修医に指導することができる。
(6) 腹腔鏡手術、子宮鏡下手術を指導医の指導下で術者として行うことができる。目標症例数:腹腔鏡手術20例、子宮鏡下手術10例。
【外来】
(1) 内診所見が的確にとれる。
(2) 問診結果から、診断に必要な検査を行い、その結果を評価することができる。
(3) 正常初期妊娠の診断および異常妊娠との鑑別ができる。
(4) 原発性、続発性無月経患者の検査計画、診断、治療を的確に作成することができる。
(5) 更年期障害の患者に対してホルモン補充療法等の治療および定期検診の計画作成を適切に行うことができる。
(6) 婦人科疾患の画像診断を的確に行うことができる。
(7) 子宮頸部または体部の細胞、組織採取を適切に行い、診断結果を理解できる。
(8) コルポスコープ診断を適切に行うことができる。
(9) 終末期患者の管理(緩和的治療による疼痛対策など)を行うことができる。

評価

各研修施設の指導医がそれぞれの研修施設において、後期研修医の設定した研修目標、行動目標が達成できたかを確認し、評価およびフィードバックを行う。

基本手技の取得

コルポスコピー
局所麻酔
経腟分娩
産科経腔超音波(妊娠初期)
産科経腹超音波(妊娠後期)
分娩待機者の内診
子宮卵管造影
帝王切開術

認定医・専門医の取得(平成28年度)

日本産科婦人科学会産婦人科専門医
日本超音波医学会超音波専門医
日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
日本臨床細胞学会細胞診専門医
日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医
日本生殖医学会生殖医療専門医
日本臨床遺伝学会臨床遺伝専門医
日本女性医学会女性ヘルスケア専門医

診療実績

 

2013

2014

2015

婦人科

 

 

 

【良性】

 

 

 

開腹手術

 

 

 

 腹式単純子宮全摘術

80

90

61

 子宮筋腫核出術

25

19

17

 付属器切除術

38

34

47

 卵巣嚢腫摘出術

4

9

3

 その他

12

4

2

 

 

 

 

腟式手術

 

 腟式子宮全摘術

1

1

6

 TCR

38

38

39

 

 

 

 

腹腔鏡手術

 

 付属器切除術

73

63

60

 卵巣嚢腫摘出術

52

43

46

 筋腫核出術

12

15

11

 異所性妊娠

10

17

10

 LAVH, TLH

17

29

26

 

 

 

 

【悪性】

 

 広汎子宮全摘術

15

18

23

 準広汎子宮全摘術

15*

9*

7*

 単純子宮全摘術(拡大子宮全摘術含む)

74*

73*

94*

 子宮頸部円錐切除術

80

65

77

 子宮腟部蒸散術

3

1

1

 その他

8

6

23

* 骨盤内リンパ節、傍大動脈リンパ節の有無は問わない

 

 

 

 

 

産科

 

 

 

分娩数

761

753

731

経腟分娩数

449

436

394

帝王切開分娩数

312

317

337

双胎分娩数

56

70

93

品胎分娩数

0

0

0

帝王切開率(%)

41.0

42.1

46.1

出生体重1000g未満出生数

23

15

32

出生体重1000g~1499g出生数

29

25

24

母体搬送受け入れ数

124

105

119

母体搬送受け入れ率(%)

62.0

49.5

50.0

周産期大量出血に対するIVR症例数

9

6

4

 

 

 

 

生殖医療

 

 

 

採卵件数

790

589

501

卵巣凍結・移植

71

71

79

研究活動

(1) 婦人科がんにおける癌幹細胞に関する研究
(2) 婦人科がんと免疫応答システムに関する研究
(3) 子宮頸がんにおけるレクチンマイクロアレイを用いた新たな診断法開発に関する研究
(4) 子宮体がんの予後因子に関するレクチンマイクロアレイを用いた探索研究
(5) 卵巣明細胞線癌に対する新たな治療薬開発に関する分子生物学的検討
(6) 卵巣機能維持に関する遺伝子機構の解析とその臨床応用
(7) 卵胞発育と閉鎖に関与する各種遺伝子の機能解析
(8) 更年期症状の社会・文化的背景に関する疫学的研究
(9) 卵巣組織凍結・移植に関する基礎的研究と臨床応用
(10) ヒト卵胞の体外培養・成熟に関する基礎的研究
(11) 早期閉経及び正常閉経後女性における脂質代謝、骨代謝に関する研究
(12) 全ゲノムおよびインプリンティング解析による周産期疾患(早産、GDN、妊娠高血圧 etc.)の原因究明
(13) 胎児心電図を用いた新しい胎児モニタリング法の開発
(14) 新しい胎児診断、胎児治療法の開発研究
(15) 周産期疾患(特に妊娠糖尿病)の診断・治療のための臨床研究
(16) 卵胞活性化技術を用いた早発閉経に対する不妊治療の基礎的・臨床的研究

学会、研究会など(国内学会、国際学会)

日本産科婦人科学会、日本婦人科腫瘍学会、婦人科悪性腫瘍研究機構、日本周産期・新生児医学会、
日本超音波医学会、日本女性医学学会、日本生殖医学会、日本受精着床学会、日本臨床細胞学会、日本緩和医療学会、日本癌治療学会、日本産婦人科内視鏡学会、日本人類遺伝学会、日本生殖医療心理カウンセリング学会、日本がん・生殖医療研究会、International Gynaecological Cancer Societyなど

進路

(1) 後期臨床研修3年目修了時に産婦人科専門医試験受験資格を取得し、4年目に受験できる。
(2) 後期臨床研修5年目(卒後7年目)には産婦人科一般臨床医としてひと通りの知識・技術の習得を完成することを目指す。以降は周産期医学、生殖内分泌医学、婦人科腫瘍学、婦人科内視鏡学などの専門医を目指す研修に入る。
(3) 研修期間後に取れる資格日本産科婦人科学会専門医、周産期専門医、女性ヘルスケア専門医、日本婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、内視鏡技術認定医、マンモグラフィー読影医など。
(4) 留学先
①【国内】 IVF大阪クリニック(大阪)、IVFなんばクリニック(大阪)、国立成育医療センター研究所(東京)、北海道大学遺伝子病制御研究所、国立がん研究所センター等
②【海外】ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)、スタンフォード大学(米国)、ノースウェスタン大学(米国)、ニューヨークメディカルカレッジ(米国)、カロリンスカ大学(スウェーデン)等。
(5) 非大学院生に対しても、学位取得の道は開かれている。

ホームページ・資料請求・問合せ先

聖マリアンナ医科大学 産婦人科学講座
〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1
Tel:044-977-8111(内3332)
Fax:044-977-2944
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