救急科

後期研修プログラム

理念・特徴

理念

近年、救急搬送症例の増加と病態の多様化が顕著であり、情報の限られた環境下で、多彩な病態に対応しなければなりません。このような現状に対して確固たる専門性と意識をもって対応する救急医の存在が必要であり、救命と病状安定に限らず、重症病態を離脱するまでの集中治療と、並行して病態を解き明かす総合診療が求められています。同時に、地域包括ケアシステムと地域医療へ習熟し、病院前活動の評価と発展の中核となり、災害発生時には災害医療への参加するために、多様な技量と広い視野が必要となります。
このような現状をふまえて、本プログラムでは、軽症から重症まで多彩な病態を、限られた情報の中で安定させ、急性期の治療と病態の解明を行いつつ、他の専門科、多職種と連携して社会的背景にも配慮した医療を提供できる医師の育成を目標とします。

特徴

本プログラムの特色は、1~3次救急患者を対応するER、集中治療、総合診断を連続した専門領域と捉え、超急性期から退院・転院までの一連の診療を習得できることにあります。複数の施設において1~3次救急症例を経験し、かつ、ER~ICUで行われる超急性期の診察および治療、一般病棟における治療継続、社会的問題の解決を経て退院するまでを学ぶことが可能です。多様な規模と組織母体を持つ病院をローテーションするため、多くの疾患と異なる重症度を経験し、地域による救急医療のニーズと提供する救急医療サービスの違いを体感・学習することができます。

研修病院

本プログラムは、研修施設要件を満たした8施設によって行われます。基幹施設となる聖マリアンナ医科大学病院と、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院を軸として、多様な特性と立地条件を持つ施設からローテーション先を選択できます。
研修施設群:
聖マリアンナ医科大学病院、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院、川崎市立多摩病院、聖隷横浜病院、練馬光が丘病院、東京北医療センター、東京ベイ・浦安市川医療センター、福井大学医学部附属病院

プログラム統括責任者、指導医

統括責任者:平 泰彦(聖マリアンナ医科大学救急医学教授)
指導医:聖マリアンナ医科大学病院5名(専門医8名)、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院2名(専門医4名)、川崎市立多摩病院2名(専門医4名)、聖隷横浜病院2名(専門医3名)、練馬光が丘病院1名(専門医4名)、東京北医療センター0名(専門医1名)、東京ベイ・浦安市川医療センター2名(専門医8名)、福井大学医学部附属病院9名(専門医11名)

ローテーションプログラム例

1) 研修期間
原則として3年間です。
2) 選択領域とローテーションの概要
研修の骨子は、総合内科領域が充実している1-2次救急病院でのER業務と、救命救急センターでの3次救急業務およびICU管理、地域医療を支える多様な施設での業務です。研修の過程において、各人が重きを置く領域が明確になれば、それまでの研修内容と経験症例・手技を考慮して希望する施設を選択できます。研修の順序については要望により変更することができます。別にローテーション例を示します。
3) サブスペシャリティ領域との連続性
基幹病院である聖マリアンナ医科大学病院、連携施設である聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院、東京ベイ・浦安市川医療センター、福井大学医学部附属病院は、日本集中治療医学会の専門医認定施設であり、集中治療領域での研修が可能です。

施設名称

研修領域

1年目

2年目

3年目

4-9

10-3

4-9

10-3

4-6

10-3

聖マリアンナ医科大学病院

1.ER(外来)

2.救命(入院)

3.手術・内視鏡・IVR

4.ドクターカー

A

A

C

C

E

E

聖マリアンナ医科大学

横浜市西部病院

1.ER(外来)

2.救命(入院)

3.手術・内視鏡・IVR

4.ドクターカー

B

B

D

D

F

F

川崎市立多摩病院

1.ER(外来)

E

F

A

B

C

D

聖隷横浜病院

1.ER(外来)

2.救命(入院)

C後半

D後半

E後半

F後半

A後半

B後半

練馬光が丘病院

1.ER(外来)

2.救命(入院)

3.手術・内視鏡・IVR

D前半

C前半

F前半

E前半

B前半

A前半

東京北医療センター

1.ER(外来)

2.救命(入院)

3.手術・内視鏡・IVR

D後半

C後半

F後半

E後半

B後半

A後半

東京ベイ・浦安市川医療センター

1.ER(外来)

2.救命(入院)

3.手術・内視鏡・IVR

4.ドクターカー

F

E

B

A

D

C

福井大学医学部附属病院

1.ER(外来)

2.救命(入院)

3.手術・内視鏡・IVR

C前半

D前半

E前半

F前半

A前半

B前半

到達目標

1) 専門知識と技能・手技
研修修了時には、1~3次救急施設、在宅医療のいずれであっても、診療を可能にする知識と技能の習得を目標とします。
日本救急医学会が定める救急科領域研修カリキュラムに沿った項目を習得します:救急医学総論、病院前救急医療、心肺蘇生法・救急心血管治療、ショック、救急初期診療、救急手技・処置、救急症候に対する診療、急性疾患に対する診療、外因性救急に対する診療、小児および特殊救急に対する診療、重症患者に対する診療、災害医療、救急医療の質の評価・安全管理、救急医療と医事法制、医療倫理

2) 学問的姿勢
研修中に、科学的思考、議題解決型学習、生涯学習、研究などの技能と態度を習得し、学問的姿勢を実践します。
1 自己学習を継続し、知識をupdateすることによって最新のEBMを実践する。
2 自分の臨床内容を検証(ふりかえり)し、自己研鑽を継続する。
3 臨床経験より得られた疑問を、基礎研究や臨床研究に昇華させる。
4 Studyカンファレンスを通じて研究に対する意欲・向上心を高める。
5 多施設共同研究や各種レジストリへ積極的に参加する。
6 学会・研究会などに積極的に参加し発表、論文を執筆する。

3) 医師としての倫理性、社会性
専門的な臨床能力(コンピテンシー)だけでなく、医師として誰もが習得する必要のある、下記の基本的臨床能力(コアコンピテンシー)を習得します。
1 患者やメディカルスタッフへの接し方に配慮しコミュニケーション能力を磨く。
2 誠実かつ自律的に医師としての責務を果たし、周囲から信頼されるプロフェッショナリズムを修める。
3 診療記録を的確に記載する。
4 医の倫理、医療安全等に配慮し、患者中心の医療を実践する。
5 臨床から学ぶことを通して基礎医学・臨床医学の知識や技術を習得する。
6 チーム医療の一員として行動する。
7 同僚・後輩医師やメディカルスタッフに教育と指導を行う。

4) 地域医療の経験
地域医療を担う連携施設において研修し、下記の内容を経験・習得します。地域医療の研修施設では専攻医指導医、または専門医による指導の下に研修を行うことができます。救急地域医療の研修期間は、研修の進捗状況と専攻医の希望により適宜、配慮します。
1 周辺の医療施設との病診・病病連携の実際を経験する。
2 地域におけるメディカルコントロール(MC)、地域包括ケアを経験する。
3 地域による救急医療のニーズと、提供する救急医療サービスの違いを体学習する。
4 訪問診療サービスに参加し、在宅医療の現場を実体験する。
5 地域の救急医療機関に出向いて救急診療を行い、自立して責任をもった医師として行動することを学ぶとともに、地域医療の実状と求められる医療について学ぶ。
6 地域のメディカルコントロール協議会、消防本部等で行われる事後検証に参加し、病院前救護を実体験する。
7 ドクターカーで救急現場に出動し、あるいは災害派遣や訓練を経験することにより病院外で必要とされる救急診療を実体験する。

5) 学術活動
本プログラムでは、現場での医療だけではなく、臨床研究や基礎研究へも参加することができます。
1 筆頭者として救急科領域の学会で少なくとも1回の発表を行う。
2 筆頭者として少なくとも1編の論文発表を行う。
3 多施設共同研究や各種レジストリへ参加する。

評価

1) 形成的評価
1 フィードバックの方法とシステム
(1) 研修カリキュラムに示すコアコンピテンシー項目と、救急科領域の専門知識および技能について、6ヶ月毎の面接で評価します。
(2) 専攻医研修実績フォーマットと指導記録フォーマットを用いて、形成的評価を行います。
(3) これらの研修実績と評価記録を保存し、総括的評価に活かすとともに、次年度の研修指導に反映させます。

2 指導医層を対象としたフィードバック法の学習
(1) 本プログラムに参加する指導医は、日本救急医学会等の準備する指導医講習会などを利用して、教育手段やフィードバックの方法を学習します。
(2) 日本救急医学会が準備する指導医マニュアルに沿った指導を行います。
(3) 専攻医による指導医の評価を参考に、よりよい指導を目指します。

2) 統括的評価
1 評価項目・基準と時期
3年間の研修終了直前に、専攻医研修実績フォーマットおよび指導記録フォーマットによる年次毎の評価を加味し、総合的な評価を受けます。専門的知識、専門的技能、医師として備えるべき態度、社会性、適性等を習得したか判定されます。

2 評価の責任者
専門研修期間全体を総括しての評価:専門研修プログラム統括責任者が行います。

3 修了判定のプロセス
研修基幹施設である聖マリアンナ医科大学において、知識、技能、態度それぞれについて評価を行います。修了判定には専攻医研修実績フォーマットに記載された経験すべき疾患・病態、診察・検査等、手術・処置等の全項目について、自己評価および指導医等による評価が必要です。

4 多職種評価
特に態度について、多職種のメディカルスタッフ(看護師、薬剤師、放射線技師、クリニカルエンジニア、医師事務、ソーシャルワーカー等)によって、専攻医の日常臨床が評価されます。指導責任者は、メディカルスタッフからのインタビューをもとに、人間性とプロフェッショナリズムについて評価を行います。

3) 知識・技能・態度の段階的評価
各年度において規定の項目を段階的に学習し、指導医は目標とするコンピテンシーレベルを評価します。
【段階的評価】
知識項目について:
A:修得した知識を、同僚・後輩医師へプレゼンテーションできる。
B:適切なリソースから知識を修得する。
技能項目について:
A:独立してチームを率いることが出来る(フロアマネージャー業務)。
B:チームの一員として行動できる(シニアトップ業務)。
C:指導医を手伝える(シニア業務)。
D:技能に関する知識をプレゼンテーションできる。
態度項目について:
A:修得した態度を臨床現場で実践できる。
B:修得した知識の必要性を、同僚・後医師へプレゼンテーションできる。
C:適切な態度についての知識を修得する。

基本手技の習得

日本救急医学会が定める救急科領域研修カリキュラムに準じます。
症候:
心停止(蘇生チームリーダー・MC体制下の指示)、停止(緊急薬剤投与)、停止(心拍再開後の集中治療管理)、ショック、意識障害、失神、めまい、頭痛、痙攣、運動麻痺・感覚消失・鈍麻、胸痛、動悸(不整脈を含む)、高血圧緊急症、呼吸困難、咳・痰・喀血、吐血と下血、腹痛、悪心・嘔吐、下痢、腰痛・背部痛、乏尿・無尿、発熱・高体温、倦怠感・脱力感、皮疹、精神症候
病態:
頭蓋内圧亢進、急性呼吸不全(ARDS)、急性心不全、急性肝障害、肝不全、Acute Kidney Injury、敗血症、多臓器不全、電解質・酸塩基平衡異常、凝固・線溶系異常、救急・集中治療領域の感染症、頭部外傷、脊椎・脊髄損傷、顔面・頸部外傷、胸部外傷、腹部外傷、骨盤外傷、四肢外傷、多発外傷、重症熱傷・気道熱傷・化学熱傷・電撃症、急性中毒、環境障害(熱中症・低体温症・減圧症等)・溺水、気道異物、食道異物、刺咬症、アナフィラキシー、小児科領域の救急患者、精神科領域の救急患者、産婦人科領域の救急患者、泌尿器科領域の救急患者、眼科領域の救急患者、耳鼻咽喉科領域の救急患者
手技:
緊急気管挿管、電気ショック(同期・非同期)、胸腔ドレーン、中心静脈カテーテル、動脈カニュレーションによる動脈圧測定、緊急超音波検査(FAST 含む)、胃管の挿入と胃洗浄、腰椎穿刺、創傷処置(汚染創の処置)、簡単な骨折の整復と固定、緊急気管支鏡検査、人工呼吸器による呼吸管理、緊急血液浄化法、重症患者の栄養評価と栄養管理、重症患者の鎮痛・鎮静管理、気管切開、輪状甲状間膜穿刺・切開、緊急経静脈的一時ペーシング、心囊穿刺・心囊開窓術、開胸式心マッサージ、肺動脈カテーテル挿入、IABP導入管理、PCPS導入管理、大動脈遮断用バルンカテーテル挿入、消化管内視鏡による検査と処置、イレウス管挿入、SBチューブ挿入管理、腹腔穿刺・腹腔洗浄、ICPモニタ挿入、腹腔(膀胱)内圧測定、筋区画内圧測定、減張切開、緊急IVR、全身麻酔、脳死判定

認定医、専門医の取得

日本救急医学会専門医、日本救急医学会指導医、日本集中治療学会専門医、日本内科学会認定内科医(*)、日本内科学会総合内科専門医、FCCSプロバイダー・インストラクター、ICLS プロバイダー・インストラクター、BLSプロバイダー・インストラクター、ACLSプロバイダー・インストラクター
(*)病院長の了承のもとに、内科認定医資格試験の受験資格を得ることができます。

診療実績

<2015年度>
救急車搬送件数:4,676件/年
救急外来受診者数:22,982人/年(3次外来、夜間急患センター)

研究活動

1. 経肺動脈熱希釈法による循環動態管理:多施設共同研究
2. 重症感染症の臨床および基礎的研究:プロカルシトニンの有用性、志賀毒素の中和と治療
3. 院内急変対応RRS(Rapid Response System):有用性の検証、全国への普及活動
4. 一酸化炭素中毒における光照射を使用した治療
5. 近赤外線分光法を用いた脳代謝モニタリング:心肺停止症例における脳保護
6. 汗中乳酸の測定と臨床応用

学会、研究会など(国内学会、国際学会)

日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本集中治療医学会、日本内科学会、日本中毒学会、日本外科学会、日本外傷学会、Acute Care Surgery学会、日本Shock学会、日本感染症学会、日本プライマリケア医学会、ヨーロッパ集中治療医学会(ECCM)、米国集中治療医学会(SCCM)、国際救急・集中治療医学会議(ISICEM)

進路

本プログラムでは、緊急性の有無によらず、病態の混在が常態化している現状に対応できる医師を育成します。
これによって、重症症例を管理する集中治療医(Intensivist)、地域包括ケアシステムを見据えた家庭医、複数の疾患を抱えた入院患者を診療する病棟医(Hospitalist)としての進路を視野に研修することができます。
また、各専門科へ進む前に、そして、開業する前に広く総合診療医として経験を積み、その基礎のもとに各科専門医の道を進むことも可能です。

ホームページ・資料請求・問合せ先

HP http://mariannaeccm.jp/
資料請求先 聖マリアンナ医科大学 救急医学医局
〒216-8511 神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1(内3931)
問合せ先 医局長 下澤信彦 TEL 044-977-8111(PHS0548)